ここ数日で「メガバクテリアにはブドウ糖がNGと聞いた。バードサプリSにはブドウ糖が入ってるけど影響ないのか?」的な質問を連日続けて頂戴しています
個別に全て回答していますがせっかくなのでここにも記載しておきたいと思います
おそらくことの発端は「メガバクテリアを試験管やシャーレで人工培養する際には5%濃度のブドウ糖液+20%濃度のFBSが必要」という昔に公開された論文だと思います *1
この論文自体には間違いなく、とりっぴーが運営している「ペット遺伝子研究所」でもこの論文で人工的にメガバクテリアを増殖、培養しています。ちなみにFBSというのは牛の胎児から採取した血清です。普通に売ってます
面倒で論文なんて読みたくないよ!英語だし! という方向けに簡単に翻訳すると
・メガバクテリアの人工的な増殖には ph、温度、FBS濃度、ブドウ糖濃度が大切だよ
と書いてあります。ブドウ糖の濃度は最低でも2%ぐらいだけど、5%濃度がベストだよ ということになっています *2
おそらくこのあたりの「ブドウ糖の濃度」だけを読んで「ブドウ糖はメガバクテリアに大敵!」となったのかと思います
参考までに人間も鳥も細菌も含めほとんどの生物はブドウ糖がないと生きていけませんので、別にこれは特別なことではありません
5%濃度のブドウ糖ってどれぐらい? ってことですが、これはだいたい「アクエリアス」と同じぐらいです
ちなみに100%オレンジ・ジュースやコカコーラは10%~11%ぐらいの濃度で、ガムシロップ原液は60~70%ぐらいです
で、バードサプリSに含まれるブドウ糖の濃度ですが、通常通り利用すると「0.00006%」になります。
ゼロの数は間違っていません
メガバクテリアの増殖に必要なベスト濃度5%には遠くおよびませんね
ということで「バードサプリSに含まれるブドウ糖ではメガバクテリアの増殖には影響ありませんよ」と回答しています
これが理由1です
理由2として、メガバクテリアが利用できる糖分はブドウ糖の他にもあって「グルコース(ブドウ糖)、スクロース(ショ糖)、トレハロース(天然糖)」の3つあります
愛鳥にこれらを日常的に与えている という方はかなり少ないと思いますが、メガバクテリアがここまで感染拡大している理由はなんでしょうか?
実は「炭水化物」は摂取すると体内で消化、分解されて最終的に「ブドウ糖」になります
参考までにアワの炭水化物は約60%、ヒエなら70%ぐらいです
炭水化物を含む食べ物(インコなら種子やペレット)を食べると、そのうで一時貯蔵、水で膨張され、腺胃(前胃)で消化酵素と混ぜられ、筋胃(後胃)ですりつぶされて腸へ送られて吸収されていきます
前胃(腺胃)では様々な消化酵素が分泌されており、その中のアミラーゼが炭水化物のメインであるデンプンを麦芽糖に分解して、麦芽糖は胃自体の酸によってブドウ糖に分解されます
メガバクテリアはこのブドウ糖を使って生存、活動しています
なので、例えばメガバクテリアにブドウ糖を一切与えなければメガバクテリアを餓死させることができる! ということにはなりません
鳥の主食である炭水化物を含む食べ物を食べた時点でメガバクテリアにも栄養が行ってしまうからです
インコたちの主食の定番「アワ」1粒の重さは0.0032gでした 食物繊維等を抜いた炭水化物(アミロース)がブドウ糖に100%変換されるとして、アワ1粒食べると0.0010gのブドウ糖を摂取したのと同等となります
最初のバードサプリSを通常通り使用すると、飲水1mlあたり0.00006gとなります。仮にバードサプリSの分包1日量を全部直接食べたとしても、0.006gですのでアワ3粒と同程度となります
もしもバードサプリSに含まれるブドウ糖等を減らしたい、と思うのであれば主食のアワ3粒を減らせばOKです
ただ、そんなことする必要はないのでご安心していつも通りの食餌を与えて下さい
ないとは思いますがメガバクテリア感染している愛鳥に故意にガムシロップを大量に飲ませる、なとはさすがに悪影響がありますのでやめて下さい。ローリーなどの果実食の子から果物を取り上げるのもやめてください。
メガバクテリアは普通に獣医師の指示通りに投薬、通院して治療すれば問題なく駆除できます
治療が終われば何も気にすることはありません。必要であればメガバクテリア検査を顕微鏡ではなく遺伝子検査で受けるとより正確です(高額ですが)
メガバクテリアによる後遺症が残った場合は、獣医師の指示通り過ごして下さい。お薬が出ている場合は飲み合わせ等もありますのでカルシウムが含まれるネクトンやバードサプリ禁止とされることもありますので(説明されると思います)
と、いうことで
メガバクテリア感染鳥、治療中、完治後、いずれであってもバードサプリSに含まれるブドウ糖による影響はありません
それよりも不足するビタミン等を補うことの方がずっと有意ですので安心してお使い下さい
参考文献
*1 Growth and metabolic characterization of Macrorhabdus ornithogaster https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17459854/
*2 見つけられませんでした。0.1%~20%まで濃度別に培養した実験論文があったはずです
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